登守にも、神尾主膳にも、あんなに心安立てにはできないはずだが、お銀様にジロリとあの眼で睨められると、口から出ようとした言葉さえ、咽喉へ押詰ってしまうのが、自分ながら腑甲斐《ふがい》のないことに思われて、あとで焦《じれ》ったがるが、その前へ出ると、どうしても段違いで相撲にならないことが自分でわかるだけに、口惜《くや》しくてならないでいるのです。
 お銀様の応対は、いつも懐中に匕首《あいくち》を蓄えていて、いざと言えば、自分の咽喉元へブッツリとそれが飛んで来るようで、危なくてたまらない。お銀様は、たしかに武術の心得もあって、何者でも身近く寄せつけないだけの用意は、いつでもしている。神尾主膳ほどの乱暴者でも、うっかり傍へ近寄れないのはそのせいでもあるが、お角の近寄れないのはそれだけではない。どこがどう強くって、どんなに怖いのだかわからないなりに、お角にとってはお銀様が苦手《にがて》です。
 お角はその絵本を見ると、お銀様の生霊《いきりょう》がいちいちそれに乗りうつって、この薄暗い土蔵の二階の一間には、すべて陰深《いんしん》たる何かの呪いの気が立てこめているようで、怖ろしくてたまらないから、急
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