だって、ただの女じゃありませんか」
 子曰《しのたまわ》くや、こそ侍《はべ》れのうちに、こんな浮世絵草紙を見出したことがお角には、かえって味方を得たように頼もしがられて、皮肉な笑いを浮べながら、窓の光に近いところへ持ち出して、その絵巻を繰りひろげて見ると、
「おや?」
と言って、さすがのお角がゾッとするほど驚かされました。
 それは、絵巻のうちの美しい奥方の一人の面《かお》が、蜂の巣のように、針か錐《きり》かのようなもので突き破られていたからです。悪戯《いたずら》にしてもあまりに無惨な悪戯でありましたから、お角は身ぶるいしました。急いでその次を展《ひろ》げて見ると、それは花のような姫君の面《おもて》が、やはり無惨にも同じように針で無数の穴が明けられていました。
「おお怖い」
 その次を展げると、水々しい町家の女房ぶりした女の面が、今度は細い筆の先で、無数の点を打ちつけて、盆の中に黒豆を蒔《ま》いたようになっています。
 あまりのことに呆《あき》れ果ててお角は、それからそれと見てゆくうちに、一巻の絵本のうち、女という女の面《かお》は、どれもこれも、突かれたり汚されたり、完膚《かんぷ》のあ
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