ら庭下駄を穿《は》いてカラカラと庭を廻って、井戸側《いどわき》から土蔵の方へと行きます。
「御免下さいまし」
と小声に言って、土蔵の戸前に手をかけました。重い扉をズシズシと押し開いて、薄暗い土蔵の中へ足を踏み入れ、
「いらっしゃいますか」
これも小声でおとのうてみましたけれど返事がありません。気味悪そうにお角は、蔵の中へ二足三足と足を入れて、二階へのぼる梯子段の下まで来て、
「お銀様」
はじめて人の名を呼んで、二階を見上げました。けれどもやはり返事はありません。
「御免下さいまし」
再び案内の言葉を述べて、その梯子段を徐《しず》かに上って行きました。梯子段を上りつめると、頭の上に開き戸があるのを、下からガラガラと押し開いて、
「いらっしゃいますか」
はじめて二階の一間を覗《のぞ》いて見ました。それは暗澹《あんたん》たる一室であるけれども、南の方に向いて鉄の格子に金網を張った窓があいていましたから、下のように暗くはありません。で、畳もしっくりと敷きつめてあって、四隅には古箪笥や、長持や、葛籠《つづら》や、明荷《あけに》の類が塁《とりで》のように積まれてあるけれども、それとても室を
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