らっしゃるか、見当をつけておいであそばすでございましょうね」
と言ってお角は、そっと神尾主膳の面《おもて》をうかがいました。
「そりゃ拙者にもわからん、その若いのを生捕《いけど》って、旗揚げの軍費を調達させた当人に聞いてみるよりほかはなかろうよ」
「では全く、殿様は御存じないんでございますね」
「知っていれば、ただは置かんよ」
「御存じないのが、あたりまえですよ、そんなことがあろうはずがございませんもの。もしありましたら、大びらに御披露して、ずいぶん皆様を羨ましがらせて上げるんですけれども」
お角はこう言って笑いましたけれども、なお神尾の腹の底を読もうとするらしい。しかし、神尾はそれ以上は何も知っておらぬようです。その時にまた廊下で慌《あわただ》しい人の声、
「殿様、殿様、神尾の殿様、金助でございます」
金助というのは多分、両国橋の上で、宇治山田の米友のために大川の真中へ抛《ほう》り込まれたその人に相違ありますまい。でも、無事に這《は》い上って、この屋敷へたどり着いたものと思われます。
お角は金助と入違いにこの部屋を外《はず》して、土産物らしい風呂敷包を抱えて、廊下を歩いて縁側か
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