た時に、神尾主膳が、
「お角、今に始まったことではないが、お前の腕の凄いのには恐れ入った」
改まったような言いがかりだから、お角も用心して、
「殿様、改まって何をおっしゃるのでございます」
「しらを切っちゃいかん、お前が今度の房州行きなんぞは運もよかったが、腕の凄さは、いよいよ格別なものだ」
「神尾の殿様、そんな気味の悪いことをおっしゃっておどかしちゃいけません、こう見えても気が小さいんですからね」
「あんまり気が小さいから、少しはオドかして、大きくしてやらぬことにはしまつがつかん」
「何をおっしゃるんですか、わたしには一向わかりません」
「お前にはわかるまいが、こっちには、すっかり種が上っているんだ、房州へ行って命拾いをして来た上に、金箱を背負《しょ》い込んで来て、それでなにくわん面《かお》をして口を拭っているところなんぞは不埒千万《ふらちせんばん》だ、なあ、福」
主膳が福兄を顧みると、福兄は一も二もなく頷《うなず》いて、
「そうですとも、そうですとも、ありゃ実際、不埒千万ですよ、あれはただじゃ置けませんよ」
「福兄さんまでが殿様に御加勢なんですか、金箱とおっしゃったって、まだ分
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