おいらはこうして俯向《うつむ》いて、草鞋の紐を結んで、笠をこうやって前に被っているから、向うは見えねえんだ、お前の方は、笠もなにも被らねえで、前からやって来るんだから、本当なら、おいらが突き倒されてしまうところなんだ、それを、危ねえ! と思ったから左へよけて、おいらの身体は無事だったが、お前は、そのハズミを食って、おいらの代りに前へ倒れたんだ、まあ怪我をしなかったのが仕合せだあな、勘弁しろ、勘弁しろ」
 こう言って感心にも宇治山田の米友は、相手にしないで行き過ぎようとします。これは米友としては出来過ぎですけれども、金助は血迷っていて、この米友の出来栄《できば》えを買ってやる余裕がありません。
「おいおい、待て待てこの野郎、背はちんちくりん[#「ちんちくりん」に傍点]だが、どこまで人を食った野郎だか知れねえ、いよいよ癪にさわる言い草だ、待て」
 金助は米友の筒袖を引張って、引留めました。
「そんなに引張らなくってもいいや、逃げも隠れもしやしねえよ、何か言い草があるなら、うんとこさと言いねえな」
 かかる場合に、決してわるびれる米友ではありません。
「言わなくってどうする、今の言い草をもう
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