に主人を見守っていたムク犬が今度は、それと違って垣根の彼方《かなた》を見つめています。前後の模様を見ると、垣根のかげから庭のうちをうかがっていたものがあるらしい。お君は全くそれに気がつかないが、ムク犬は早くもそれと感づいたらしいのです。
お君はその時に身のうちに寒気《さむけ》を感じて、いつのまにか、恥かしい寝衣姿《ねまきすがた》で、奥庭の池のほとりに立っている自分を見出しました。
「ああ、悪かった、わたしは、また気がゆるんでしまいました。誰も見ていなかったかしら。ムクや、お前こっちへおいで、わたしは内へ入りますから」
正気に返ったお君は、※[#「勹/夕」、第3水準1−14−76]惶《そうこう》として縁へ上って、障子の中へ身を隠してしまいました。
十五
それから暫らくたって、両国橋を啣《くわ》え楊枝《ようじ》で、折詰をブラさげながら歩いて行くのは例の金助です。
「占めしめ、万事こう来なくっちゃならねえ、駒止橋《こまどめばし》の獣肉茶屋《けだものぢゃや》で一杯飲んで、帰りがけにももんじいや[#「ももんじいや」に傍点]へ寄って、狐を一舟|括《くく》らせて、これから
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