奴と思いながらも、何か尋ねてみたい気になって、
「金助さん、宇津木さんはおりませんよ、何か御用なら、わたしが承っておきましょう」
「左様でございますね、別に御用ってほどのこともねえでございますがね、それではこれでお暇《いとま》を致しましょうか知ら」
「あの、金助さん、お前さんに御用がなければ、わたくしの方にお聞き申したいことがあるのですけれど、ちょっとあちらまで来て下さいませんか」
「へえ、お松様、あなた様から何か私に御用があるとおっしゃるんですか、よろしうございます、そうおっしゃられるといやと申し上げるわけにも参りませんな、お邪魔を致しましょう」
 金助は恩にきせるような言い方をして、お松のあとに従って、長い廊下の奥へ行く途中で、
「なるほど、結構なお邸でございますな、ははあ、こちらの障子が霞でございますな、欄間《らんま》の蜀江崩《しょっこうくず》しがまた恐れ入ったものでげす、お床の間は鳥居棚、こちらはまた織部《おりべ》の正面、間毎間毎の結構、眼を驚かすばかりでございます、控燈籠《ひかえどうろう》の棗形《なつめがた》の手水鉢《ちょうずばち》、あの物さびたところが何とも言われません、建
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