前《たてまえ》にこうして渋いところを見せ、間取りには贅《ぜい》を凝《こ》らしておいて、茶室や袖垣のあんばいに、物のさび[#「さび」に傍点]というところをたっぷりとあしらったところなどは実際憎うございますよ。おやおや、大した石燈籠、こりゃ本格ですよ、橘寺形《たちばなでらがた》の石燈籠、これをそのまま据えたところなんぞは、飛ぶ鳥も落すようなものでげす、十万石以上のお大名でもなけりゃ出来ません。全く驚きました、表からお見かけ申したんじゃ、これほどのお住居《すまい》と気のつくものはございません」
 金助は相変らず歯の浮くような追従《ついしょう》を並べて、四辺《あたり》をキョロキョロ見廻しながら、お松に導かれて廊下を歩いて行きます。

         十四

 その時分、お君はムク犬を連れて、奥庭を歩いておりました。
 いつぞやのように打掛《うちかけ》こそ着ていないけれども、寝衣姿《ねまきすがた》のままで、手には妻紫《つまむらさき》の扇子《せんす》を携えて、それで拍子を取って何か小音に口ずさんで歩いて行くと、それでも例によってムクは神妙にあとをついて、築山《つきやま》の前の芝生まで来ました。

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