なれない自分の身の意気地のないことが思われてなりません。お松はそこで、もうお君を見舞に行くほどの勇気もなくなって、さあ、なんとかして、たった今あの刀屋を帰さないようにして上げる手段はないものかと、また自分の部屋へ取って返したけれども、もう所持品にしても、さして金目のあるものはなく、ただ蔵《しま》ってあるのは着物だけであるけれど、それとても、今宵の間に合うのではなし、ああ、こんな時にあの七兵衛のおじさんが来てくれたならと、あてのない人を空頼《そらだの》みにして、とうとう夜を明かしてしまいました。

 翌朝になってみるとお松は、また兵馬に対して、どうやら済まない心持になりました。
 それで、廊下を通りがけに兵馬の部屋を訪れてみると、もうその時に兵馬はそこにおりませんでした。お松は、せっかく、しおらしい心に返ったのが、またむらむらと抑えきれない不快の心に襲われて、足早にそこを立去ろうとするところへ、なにげない面《かお》をしてやって来る一人の男に、ハタと行当りました。
「お早うございます」
「おや、お前は金助さんではないか」
「はい、その金助でございます」
 お松も、小面《こづら》の憎いイヤな
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