か申しておりました」
「ははあ、刀屋が来ましたか。それから、金助は何と言いました」
「あの方は何とも申しません、ただ、わたしに向って、このごろはさだめてお淋しうございましょうと、笑いながら言いましただけでございます」
 こう言ってお松は、伏目になりました。
「ははあ……何を言うのかあいつの言うことは、取留まったものではない」
 兵馬はやはり、淋しき笑いに紛《まぎ》らわそうとするらしいが、
「兵馬様」
 そのときお松は、屹《きっ》と心を取り直したように面《かお》を上げて、兵馬の名を呼びました。
「何でござる」
「あなた様は、このごろ、どちらの方へ多くお出かけになりまする」
「何を改まって、そのようなことをおたずねなさる」
「いいえ、わたくしは、それをお伺い致さねばならないほど、このごろは、ほんとに気が弱くなってしまいました」
「そなたの言うことが、わしにはよくわかりませぬ。拙者《わし》のこのごろの出先といって、その目的は、そなた存知の通りなれど、出先はやはり今日は東、明日は西、どこときまったことなく江戸の天地を、四角八面に潜《くぐ》り歩いているようなものじゃわい」
「それならよろしうござ
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