に置いて、脚絆《きゃはん》のまま右の足を曲げて左の方へ組み上げたのは、町人風はしているけれども、決して町人ではありません。
 それと向き合った一方のは、前のに比べると年配であります。これはまあ生地《きじ》が百姓らしい上に一癖ありそうで、前のほど横柄《おうへい》でないところは、主従とも見えないが、たしかに前のに対して一目は置いているようです。
 この二人は甘酒に咽喉をうるおしながら、期せずして頭の上の、例の大きな額面に眼が留まりました。
「ははあ、甲源一刀流、秩父の逸見《へんみ》だな」
と言ったのは、足を曲げていた方の道中師です。
「なるほど、逸見先生の御内《おうち》で、大した額を奉納なさいました」
 前のは言い方が横柄で、後のは幾分か慎《つつま》しやかであります。
「うむ、比留間与助、知ってる、桜井なにがし、あれも名前は聞いている、それから三番目……のはどうしたんだ、白紙《しらかみ》を頭から貼りかぶせたのは不体裁《ふていさい》極まるじゃないか」
 その口調にこそ相異はあれ、たった今、がんりき[#「がんりき」に傍点]の百がしきりに憤慨したのと同じ動機に出でているので、心ある人ならば、誰も
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