関の山なんだけれど、それもこのごろの懐ろ工合じゃ覚束《おぼつか》ねえや、こうして吉原の真中へ入り込んで、景気のいいところを見せつけられながら、たそや[#「たそや」に傍点]行燈の数をかぞえて歩くなんぞは我ながら、あんまり気が利かな過ぎて涙が溢《こぼ》れらあ、なんとか工面はつかねえものかな」
金助はこんなことを言いながら、声色屋《こわいろや》がお捻《ひね》りを貰うのを羨《うらや》んでみたり、新内語りが座敷へ呼び上げられるのを嫉《そね》んだり、たまにおいらん[#「おいらん」に傍点]の通るのを見て口をあいたりしながら、笠鉾《かさほこ》の間を泳いでいましたが、
「おやおや、ありゃあ、たしかに見たことのあるお侍だ、俺の見た目に曇りはねえはずだが、もう一ぺん見直し……」
二三間立戻って、いま箱提灯に送られて茶屋を出た、二人連れの武士体《さむらいてい》の跡を逐《お》いました。
「そうれ見ろ、間違いっこなし、見覚えのあるも道理、神尾の殿様があれだ、あれが甲府で鳴らした神尾の殿様だ。もし……」
金助は後ろから呼び留めようと、咽喉《のど》まで声を出して引込ませ、
「向うも身分があらっしゃるから、うっか
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