万に思われてなりません。
 こいつは偽盲目《にせめくら》じゃないかと、米友はこの時にもまたそう思い出しました。

         二十

 多分石川島の造船所から乗り出したと思われるバッテーラが、この真暗な中を無提灯で、浜御殿の沖へ乗り出しました。
「どこへおいでなさるんでございます」
 艪《ろ》を押していた若い男が尋ねました。
「西洋へ」
と答えたのは、駒井甚三郎の声であります。
「エエ! その西洋へ、こんなちっぽけな船で?」
「これで行くんじゃない、沖へ出ると大きな船がある」
「へえ、いったい、あなた様は、どうしてそんなお心持におなりなさったんです、何の御用で西洋へおいでなさるのでございます」
 バッテーラを漕ぎ出したのはこの二人。人足の寄場《よせば》であった石川島。敲《たた》きや追放に処せられたもので、引受人がなくて、放してやるとまた無宿人になってしまいそうなものを、ここに集めて仕事をさせておいたから、おそらくここに駒井甚三郎のためにバッテーラを漕いでいるのは、そのなかの一人と思われます。二人とも同じような陣笠を被《かぶ》って、羅紗《らしゃ》の筒袖の羽織を着ていました。
「吉田
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