米友は眼を光らせました。それから尾を引いたような長い唸りが続きました。
矢庭《やにわ》にその席を立った米友は、また屏風のところへ行って覗いて見ました。さきには右枕になっていた竜之助が、今度は左枕になって寝ていました。蒼白い面には苦悶の色がありありと現われていました。気のせいか、一筋の涙痕《るいこん》が頬を伝うて流れているもののように見えますけれども、やはりよく眠っているには睡っているに違いありません。
また炉辺《ろばた》へ帰った米友は、火を引いて鍋を自在からこころもち揺り上げました。
ここに米友は、不思議の感に打たれています。昨夜、この人を追うて出てついに行方《ゆくえ》を見失ったが、それとは別にはからざる人を助けて来ました。
相生町の老女の家へ、人と犬とを送り届けて、昨夜出た人の行方を心許《こころもと》なく帰って見ればその人は、極めて無事にこうして眠っているのであります。
そもそもこの人は昨夜、何のためにどこまで行って、いつ帰ったかということが、米友には測り切れない疑問でありました。それよりも眼の見えないはずの人が、目の見える自分を出し抜いて無事に帰っていることが、奇怪千
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