ました。
「チェッ」
 槍を橋板の上へさしおいて、
「ばかにしてやがら、この尾上岩藤《おのえいわふじ》のお化けみたようなやつが癪《しゃく》に触らあ、何だって今頃、両国橋をうろついてるんだ、駒井能登守という野郎にだまされて、それからいいかげんのところで抛《ほう》り出されて、身の振り方に困ってここへ身投げに来たんだろう、ザマあ見やがれ、俺《おい》らは知らねえぞ、第一、このビラシャラが癪に触らあ、この尾上岩藤が気に喰わねえ、ザマあ見やがれ」
 米友はこう言って罵《ののし》って、欄干にひっかかっている裲襠《うちかけ》を蹴飛ばしたが、それでも提灯をずっと下げて川の中を見下ろし、
「馬鹿野郎」
 たまり兼ねた宇治山田の米友は、提灯をさしおいて帯を解きにかかりました。

 それから両国橋の上へ数多《あまた》の提灯が集まったのは、久しい後のことではありません。
 それをよそにして、矢の倉の河岸《かし》、本多|隠岐守《おきのかみ》の中屋敷の塀の外に立っているのは、例の頭巾を被った机竜之助であります。机竜之助は竹の杖をついてその塀の下に立っていました。ここから見れば、両国橋の側面は、その全体を見ることもで
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