ったかも知れません。
 お君もムク犬も無事にこの橋を渡りかけたように、この人影も無事に橋を渡ってここまで来ました。お君主従が行けば行く、とまればとまるのだから、たしかにそのあとを跟《つ》けて来たものと見られないではありません。
「どなた」
と言ったけれども返事がありません。お君は犬に向って、
「それごらん、お前が早く歩かないから、人が来ているじゃないか、相生町から、お前とわたしを追いかけて誰か来たんでしょう、誰でしょう、御老女様でしょうか、お松さんでしょうか、どなた」
とお君は、犬に向ってこんなことを言いました。けれども犬は答えず、やがて一声高く吠えました。
 いつしか杖を捨てた黒い人影は、刀を抜いています。
 言い知れぬ恐怖に襲われたお君は、そこに立ち竦《すく》んで、よろよろと倒れかかった片手を橋の欄干に持たせた途端に、
「あれ! 誰かお前の前にいる、お前を殺そうとしている、危ない!」

         十九

 弥勒寺橋《みろくじばし》の長屋から、机竜之助のあとを追うて出た宇治山田の米友は、そのあとを追うことにかなり苦しみました。
 なぜならば、外は月の光が暗いので、たしかに目星
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