のお松さんが好きになったのでしょう、だからお前は、わたしのところへは来ないで、お松さんのところへ尋ねて来るようになったのでしょう。お松さんは誰にも好かれます、兵馬さんにも好かれます、御老女様にも好かれます、また出入りのお武士《さむらい》たちもみんなお松様を好い人だと言って賞めています、それだのに、わたしは誰にも好かれません、みんなわたしを嫌います、駒井能登守様も、わたしを捨てて舟で逃げて行きました、お前、そうしておいで、お前を逃がさないように、これからどんなことがあっても、お前とわたしとは離れないように、ちゃんと鎖でつないで上げるから」
お君は犬に向って、こんなことを言いながら扱帯《しごき》を解いたものと見え、その扱帯の端でムク犬の首をグルグルと巻きました。ムクはけねんに堪えやらぬ面をして主人を見上げながら、主人のする通りになっていると、
「さあ、こうしておいで、こうして行きさえすれば大丈夫、これから後は、お前とわたしが離れることはない、ふたり一緒に間の山へ帰れるから」
扱帯《しごき》の一端を自分の手に持って橋の上を歩きはじめました。お君は、やはり気が変になっています。草も木も眠っ
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