すそ》を引いて、さながら長局《ながつぼね》の廊下を歩むような足どりで、悠々寛々《ゆうゆうかんかん》と足を運んでいることは、尋常の沙汰とは思われません。
 お化粧をしていた面《おもて》は絵に見るもののように美しくありました。裲襠の肩が外れて、着物の褄《つま》も裾もハラハラと乱れていました。見れば真白な素足に、冷々《ひやひや》する露の下りた橋板の上を踏んでいます。
 さすがに賑わしい両国橋の上も下も、天地の眠る時分には眠らなければなりません。
「ムクや、お前わたしと一緒においで、離れちゃいやよ」
と女の人は言いました。それは間《あい》の山《やま》のお君であります。お君の歩くのと一緒に、ムク犬もまたこの橋の上を歩いていました。
 橋の真中へ来た時分に、お君は欄干に寄り添うて、水の流れをながめながら、
「ムクや、お前、離れちゃいけないよ、今度こそは間の山へ帰るんだから、これからお前、その間の道中が長いのだから、お前がついていてくれないと、わたしは、とても間の山までは行けやしない。それにお前は、どうかすると途中で、わたしを捨てたがるんだもの……ずいぶんお前は薄情な犬だこと、わたしよりもお前は、あ
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