」
「面白いね、血を見なければ納まらねえ刀というようなやつに、お目にかかってみてえものだね。権現様の大嫌いな村正の刀というのがそれなんだってね。お前の持っているのは、そりゃ村正か」
「村正ではないけれど……よく切れる刀だ」
と言って竜之助は、どうやら横になって寝込んでしまったもののようです。米友はなお黙ってしきりに栗をゆでていたが、栗もかなりゆだったと見たから、大鉄瓶をさげて流し元へ、その湯をこぼしに行きました。湯をこぼして小笊《こざる》の中へ栗を入れて、それと鉄瓶の水を入れ換えたのを両手に持って、
「栗がゆだった、一つ食わねえか」
と言って屏風の中を覗《のぞ》いて見ると、病人さながらの竜之助が、首をうずめて寝ていた横面《よこがお》が、痛ましいほどにやつれています。そのくせ刀は、濡れた柄《つか》をこころもち斜めにして、あ[#「あ」に傍点]と言えばさ[#「さ」に傍点]と鞘《さや》を抜け出るばかりに置いてあるのが、殺気を流すのであります。
夜になると風が銀杏《いちょう》の木の葉をひらひらと落して来ました。弥勒寺《みろくじ》の鐘が九ツを打った時分に、屏風の蔭に寝ていた机竜之助はウンと寝返り
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