くには、あの吉原を一見物して来るに越したことはないと、ここで米友は、その明りのする一廓をめあてにして進んで行きました。
十
宇津木兵馬は万字楼の東雲《しののめ》の部屋に、東雲を相手にして碁を打っていました。
兵馬のここへ来た目的は、この花魁《おいらん》を相手に碁を打つことではありません、万事は金助の取計らいであります。
神尾主膳は、同じ家の唐歌《からうた》という遊女の部屋に納まって、太夫《たゆう》と禿《かむろ》とを侍《はんべ》らせて、朱《あか》い羅宇《らう》の長い煙管《きせる》で煙草をふかしていると、慌《あわただ》しく、
「白妙《しろたえ》さんのお客様が、御急病でいらっしゃいます」
「ナニ、藤原が急病?」
神尾主膳は、その急報をきいて煙管を投げ捨てて立ち上りました。新造《しんぞ》を先に立てて、白妙の部屋へ駈けつけて、
「藤原、どうした」
神尾は人をかきのけて中へ入って見ると、夜具の上に俯伏《うつぶ》しに倒れているのは机竜之助であります。そうして蒲団《ふとん》の敷布の上には夥《おびただ》しい血汐《ちしお》のあとがありました。
神尾はそれを見ると、ああ、こ
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