らず毎日石を運んだり土を荷《にな》ったりして、他の労働者と同じことに働いているのであります。
硝石《しょうせき》の精製所も出来ました。硫黄《いおう》の蒸溜所も出来上りました。機械類の磨き方は、鉄砲師の川崎|長門《ながと》と国友松造という者が来て引受けました。水圧器の組立ても出来ました。
その都度《つど》、右の労働者は、役人や仲間のものの気のつかないうちに、家の建前と機械類の構造を注意することは驚くべき熱心さでありました。熱心でそうして機敏でありました。人に気取《けど》られようとする時は、何かに紛らかして、なにくわぬ面《かお》をしている澄まし方などは、そのつもりで見れば驚くべき巧妙さであります。
夜になって人の寝静まった時分には、それらの見取図を頭の中から吐き出して紙に写していることも、誰にも知られないで進んで行きました。紙に写した見取図は、工夫部屋の縁の下を掘って埋めておくことも、誰にも見つけられないで納まって行きました。埋めておいてから例の通り疑問の秘密室の方へ出かけるけれども、そこばかりはどうしても近寄ることができないらしくあります。近寄ることができても、内部の模様はどうして
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