すみす目玉の飛び出るほど高い場代を払って門の中へ入り込むと、人気というものはおかしなもので、ついには我も我もと先を争って切符を買うような景気になって、門内へなだれ込みます。
 さすがに鰡八大尽のすることは、こんな些細なことまでも違ったものであります。道庵などは、貧乏人のくせに身銭《みぜに》を切って馬鹿囃子を雇い、家業をそっちのけにして騒いでいるのに、大尽は大評判を立てた上に、こんなことでも充分に算盤《そろばん》を取れるようにするのだから、どのみち相撲にはなりませんでした。しかし、これは鰡八が豪《えら》いというよりも、お附の作者や狂言方の仕組みが上手なので、それがために一段と、大尽の器量を上げたと言った方がいいのかも知れません。
 この園遊会も、余興も、朝鮮芝居も、ことごとく大成功でありました。その日一日でおしまいというわけではなく、当分の間、毎日つづくのであります。市中一般においては、これを見なければ話にならないから、毎日毎日、続々と詰めかけて来ました。日のべを打てば打つほど儲《もう》かった上に評判が高いのでありますから、鰡八の御機嫌も斜めではないし、お出入りの人々も恐悦に感ずるし、作
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