いよ安からぬことに思い、ついに大きな園遊会を開いて、道庵を圧倒するの計画が出来上りました。
 その計画は、さすがに大きなものでありました。天下の富豪たる鰡八大尽が、費用を惜しまずにやることですから、トテモ十八文の道庵などが比較になるものではありません。
 その園遊会の余興としては、決して馬鹿囃子のようなものを選びませんでした。その頃の名流を択《え》りすぐった各種の演芸の粋《すい》を抜いて番組をこしらえました。また主人や出入りの者もおのおの腕に撚《よ》りをかけて、その隠し芸を発揮しようということでありました。その上に、その頃朝鮮から来ていた名代《なだい》の美男子の役者がありました。それに非常な高給を払って、朝鮮芝居を一幕さし加えるということなどは、作者がかなり脳髄を絞っての計画に相違ありません。
 これらの計画や選定が、すっかり定まってしまうと、それをなるたけ大袈裟《おおげさ》に世間に触れてもらわねばならぬ必要から、人に金をやって、さんざんに吹聴《ふいちょう》させ、お太鼓を叩かせたものですから、このたびの園遊会の景気は長者町界隈はおろか、江戸市中までも鳴り響きました。
「さすがに大尽の威
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