多数に憎まれながら、こう言って見得《みえ》を切りました。
「ともかくも、ああして置くのは惜しいものじゃ」
 こうして、お君のことがこの家に集まる若い浪士たちの噂に上ってゆきました。
 しかし、それだけでは納まることができなくなった時分に、これらの連中のなかでも剽軽《ひょうきん》な一人が犠牲となって――この男ならば、たとえ言い損ねても老女から叱られる分量が少ないだろうと、総てから推薦された一人が、ある時、老女に向って思い切ってそれを尋ねてみました。
「時に、つかぬことをお聞き申すようだが、あの奥にござるあの若い婦人は、あれはいったい主のある婦人でござるか、但しは主のない婦人でござるか……」
 額の汗を拭きながらこういうと、老女は果して、厳《いか》めしい面《かお》をして黙ってその男の面を見つめておりました。
 せっかく切り出したけれども、こう老女に黙って面を見られると、二の句が継ぎ難く、しどろもどろであります。
「それがどうしたというのでございます」
 老女は意地悪く突っ込みました。
「それがその、僕が一同を代表して……」
 一同を代表してはよけいなことであります。せっかく自分が犠牲者とし
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