になる男の子を小脇にかかえた米友でありました。その子供は声を嗄《か》らして泣いていました。泣いていることが生命が無事であったことを証拠立てるのだから、その母親らしい女は駈け寄って、米友の手から奪うようにその子を抱き上げ、
「三公、まあお前、よく助かってくれたねえ、よく助かってくれたねえ」
ほんとに仕合せなことには、頬のところへ少しばかりきずが出来たばかりで、上手に落ちていましたから、多少、水は呑んでいたようだけれど、見るからに生命の無事は保証されるのであります。
「この井戸へ落ちて、よくまあ助かったねえ、ほんとに水天宮様の御利益《ごりやく》だろう」
附近の親たちはその無事であったことを賀するやら、自分の子供たちが危ないところで遊ぶのを叱るやら、井戸側はまるで鼎《かなえ》のわくような騒ぎになってしまいました。
「ほんとにこれこそ水天宮様の御利益だ」
いい面《つら》の皮《かわ》なのは米友であります。米友の背が低いから子供に見誤ったものか、或いはこの驚きに紛れて逆上《のぼせ》てしまったものか、誰ひとり米友にお礼を言うことに気がつきませんでした。そうしてやたらに水天宮様ばかりを讃《ほ》め
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