り手錠のままでつく[#「つく」に傍点]然《ねん》と坐っていましたが、米友に向って、暇ならば日本橋まで使に行って来てくれないかということでありました。米友は直ぐに承知をしました。そこで道庵の差図によって米友は、日本橋の本町の薬種問屋へ薬種を仕入れに行くのであります。
 仕入れて来るべき薬種の品々を道庵は、米友に口うつしにして書かせました。それに要する金銭の上に道庵は、若干の小遣銭《こづかいせん》を米友に与えて、お前も江戸は久しぶりだからその序《ついで》に、幾らでも見物をして来るがよいと言いました。日のあるうちに帰って来ればよろしいから、しこたま[#「しこたま」に傍点]道草を食って来いという極めて都合のよい使を言いつけました。
 米友はその使命を承って、風呂敷包を首根っ子へ結びつけて、仕立下ろしの袂のある棒縞の着物を着て、長者町の屋敷をはなれました。本来、使そのものは附けたりで、恩暇《おんか》を得たようなものだから、米友は使の用向きは後廻しにして、帰りがけに本町へ廻って薬種を仕入れて来ようとこう思いました。
 どこへ行こうかしら、暇はもらったけれども米友には、まだどこへ行こうという当《あて
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