泳いだりしました。驚きは大きいけれども、水のことだから、濡れるだけで別段に怪我はないはずであったけれども、あまりに驚いてしまったものだから、なかには腰を抜かして畳の上の同じところを、幾度も幾度も辷ったり泳いだりしているものもありました。水が胸板《むないた》へ当ったのを、ほんとうに実弾射撃で胸をうち抜かれたと思って、グンニャリしてしまったものもありました。
こうして命|辛々《からがら》で辷ったり泳いだりしているくらいだから、さしも自慢にしていた名物の書画も骨董《こっとう》も顧みる暇はなく、思う存分に水をかけられて転《ころ》がり廻ってしまいます。
この体《てい》を見た道庵先生は、躍り上って悦びました。
「者共でかした、この図を抜かさずうてや、うて、うて」
盛んにハタキを振り廻して号令を下すものだから、道庵の子分の者共はいよいよ面白がって、水鉄砲を弾《はじ》き立てました。弾薬に不足はなかったけれど、そのうちに鰡八の方では、雇人たちがそうでになって雨戸をバタバタと締めきり(なかには、あわてて雨戸と雨戸の間へ首を挟まれる者もあったり)、それで道庵軍は充分に勝ち誇って水鉄砲を納めることになり
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