しそうだとすれば、これは前の説よりも一層、威権を加えた後光《ごこう》であります。それを知ってその筋が、内偵の手を引いたのももっともと頷《うなず》かれる次第でありました。
 こんなふうに後光の射すほど、老女の隠れた勢力を信用しているものもあれば、また一説には、ナニあれはそんな混入《こみい》った威権を笠にきている女ではない、単に一種の女丈夫であるに過ぎない。たとえば筑前の野村望東尼《のむらもとに》といったような質《たち》の女で、生来ああした気象の下に志士たちの世話をしたがり、その徳で諸藩の内から少なからぬ給与を贈るものがあり、志士もまたこの家をもっともよき避難所としているに過ぎないという説も、なるほどと聞かれないではありません。
 いずれにしてもこの老女がただものでないということと、ただものでないながら、こうして通して行ける徳望は認めなければならないのであります。侠気《きょうき》、胆力、度量、寧《むし》ろ女性にはあらずもがなの諸徳を、この老女は多分に持っているには違いありません。
 別に、この老女が愛して、手許から離さぬ一人の若い娘がありました。これは疑問の余地がなく、甲州から男装して逃げ
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