て来た松女であります。老女が外出する時も、そのお伴《とも》をして行くのは大抵は松女でありました。
 甲州街道でお松の危難を助けて、江戸へ下った南条なにがしもまた、この老女の許《もと》へ出入りする武士のうちの重《おも》なる一人でありました。
 南条なにがしは、お松を助けて江戸へ出て、それからこの老女にお松の身を托したということは、おのずから明らかになってくる筋道であります。
 或る日、南条なにがしは、不意に一人の人をつれてこの家を訪れ、老女の傍にいたお松を顧みて、
「お松どの、珍らしい人にお引合せ申そう、奢《おご》らなくてはいかん」
と冗談《じょうだん》を言いながら、
「宇津木」
と呼びました。次の間にいた兵馬が、なにげなくこの座敷へ通ってまず驚いたのは、そこにお松のいることでありました。お松もまた一見してその驚きと喜びとは、想像に余りあることでありました。
「まあ、兵馬さん」
 甲府以来、その消息を知ることのできなかった二人が、ここで思いがけなく面《かお》を合せるということは、全く夢のようなことであります。
「いや、これには一場の物語がある、君に事実を知らせずに連れて来たのは罪のようだ
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