大菩薩峠
慢心和尚の巻
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)某《それがし》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)信玄公|被管《ひくわん》の内にて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#「口+愛」、第3水準1−15−23]
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一
お銀様は今、竜之助のために甲陽軍鑑の一冊を読みはじめました。
[#ここから1字下げ]
「某《それがし》は高坂弾正《かうさかだんじやう》と申して、信玄公|被管《ひくわん》の内にて一の臆病者也、仔細は下々《しもじも》にて童子《わらべこ》どものざれごとに、保科《ほしな》弾正|鑓《やり》弾正、高坂弾正|逃《にげ》弾正と申しならはすげに候、我等が元来を申すに、父は春日大隅《かすがおほすみ》とて……」
[#ここで字下げ終わり]
それは巻の二の品《ほん》の第五を、はじめから、お銀様はスラスラと読みました。
竜之助がおとなしく聞いているために、品の第六を読み了《おわ》って第七にかかろうとする時分に、
「
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