白いのが、欄干《てすり》を抜けて廊下の板の間まで手を伸ばしておりました。その面白い枝ぶりには、日当りのよいせいで、梅の花の蕾《つぼみ》が一二輪、綻《ほころ》びかけています。
「ホホホ、もう梅が咲いている」
お君の方はたちどまって、手近な、その一枝を無雑作に折って、香いを鼻に押し当て、
「おお好い香り、ああ好い香い」
心のうちにときめく香りに、お君は自分ながら堪えられないように、
「殿様に差上げましょう、この香りの高い梅の花を」
お君はそれを銚子の間に挿《さ》し込んで歩みを移そうとした途端に、よろよろとよろめき、
「おや」
それはほろ酔いの人としては、あまりに仰山なよろめき方であります。打掛の裾が、廊下の床に出ている釘かなんぞにひっかかったものだろうと思って、片手に打掛を捌《さば》き、
「おや」
振返ってみるとその打掛の裾は、廊下の下にいる何者かの手によって押えられているのでありました。
「君ちゃん」
「まあ、誰かと思ったら米友さん」
お君の打掛の裾を廊下の下から押えたのは、背の低い米友でありました。
「米友さん、悪戯《いたずら》をしては困るじゃないか」
「なにも悪戯をしやし
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