うになりました。
 お君は、我から喜んで美しい眉を落してしまいました――家中《かちゅう》の者は皆この新たなるお部屋様のために喜びました。能登守のお君に対する愛情は、無条件に濃《こま》やかなものでありました。ほとんど惑溺《わくでき》するかと思うほどに、愛情が深くなってゆきました。
 お君のためには、新たなる部屋と、念の入《い》った調度と、数々の衣類が調えられました。お君は夢に宝の山へ連れて行かれたように、右を見ても左を見ても嬉しいことばかりであります。
 お君の血色にもまた著しい変化がありました。笑えば人を魅するような妖艶《ようえん》な色が出て来ました。そして何事を差置いても、その色艶《いろつや》に修飾を加えることが、お君の第一の勤めとなりました。
 お君はこれがために費用を惜しみませんでした。能登守もまた、お君のために豊富な支給を与えて悔ゆることがないのでありました。江戸の水、常磐香《ときわこう》の鬢附《びんつけ》、玉屋の紅《べに》、それを甲府に求めて得られない時は、江戸までも使を立てて呼び求めます。
 お君にとっての仕事は、もはや、それよりほかに何事もありません。その仕事は、出来上れ
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