いうことを、一身の浮沈の瀬戸際《せとぎわ》のように気味を悪がり、それで自分たちの立場を擁護するためには、能登守の頭を擡げないように、釘《くぎ》を打ってしまわねばならぬと考えました。
 それがために、駒井能登守の立場は非常に危険なものになりました。登城しても、役所へ行っても、お茶一つ飲むことも能登守は用心をしました。夜はほとんど外出しませんでした。明山侯の来る前に、能登守を毒殺してしまおうという計画があるとの風説がありました。また夜分、忍びの者を入れて暗殺させようとしているとの風説もありました。また、能登守の内事や私行をいちいち探らせているとの忠告もありました。
 年が改まって、そうして変りのあったのは、これらのことのみに限りません。
 駒井能登守に仕えていたお君の身の上に、重大な変化が起りました。前には戯《たわむ》れに結《ゆ》ってみた片はずしの髷《まげ》を、この正月から正式に結うことになりました。いつぞやの晩には恥かしそうに密《そっ》と引掛けた打掛を、晴れて身に纏《まと》うようになりました。それと共にお君の周囲には、一人の老女と若い女中とがお附になって、使われていたお君が、それを使うよ
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