筒《たけづ》っぽうでも降った方がよっぽどいいや」
と、おかしなことを口走りました。雪なんぞは降らなくてもいい、竹筒っぽうでも降ればいいというのは、あまり聞き慣れない譬《たとえ》であります。竹筒っぽうが降れという注文は、あんまり飛び離れた注文でありましたけれど、兵馬はそれを聞いて頷《うなず》きました。取って返して例の竹筒を取り上げて、その中に入れてあった薬を手早く傍《かたえ》の紙へあけて、その代りに、いま書いたお松への返事の手紙を入れてしまって元のように栓《せん》をして、障子を前よりはもう少し広くあけると、覘《ねら》いを定めてポンと下へ投げ落しました。まもなく、
「降りやがった、降りやがった」
という声が聞えました。兵馬はその声を聞いて安心して、なお障子の隙から見ていると、米友は自分が投げた竹筒を拾って、これも手早く懐中へ忍ばせてしまって、怪訝《けげん》な面《かお》をしてこちらを見上げていたが、どこかへ行ってしまいました。
八
年が明けて、松が取れると、甲府城の内外が遽《にわ》かに色めき立ちました。
平常《ふだん》、何をしているのだかわからない連中たちが、だいぶ
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