た。そうかも知れない、いつまでもこの二階の窓の下で、口小言を言ってることが意味のあるように取れば取れる。兵馬はその様子を見ようと思って、寝床を起きました。
二階から障子を細目にあけて見ると、なるほど一人の男がしきりに、ブツブツ言いながら雪を掻《か》いています。
兵馬が見ると、それは米友であったから意外に感じないわけにはゆきません。伊勢の古市の町と、駿河《するが》の国の三保の松原とで篤《とく》と見参《げんざん》したこの男をここでまた見ようとは、たしかに意外でありました。米友、宇治山田の米友という名前も、兵馬は記憶していました。
「ははあ、友さんというのはこれだな」
米友の友を呼んでお松が、そう言うたものに違いないと兵馬は早くも覚《さと》りました。それと共に、さきほど、この薬の竹筒を運んでくれた男が、あれだなと覚りました。兵馬も米友を珍妙な人物だと思っています。その人物が珍妙であると共に、その槍の手筋は非常なる珍物であることを知っておりました。
そのうちに雪を掃除していた米友が、手を休めて二階を見上げて、
「雪というやつは可愛くねえやつだ、雪なんぞは降ってくれなくても困らねえや、竹
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