した。提灯も駕籠も附添のものも、何も言いません。
 山路のつれづれに駕籠の中にいる人は、何とかお愛嬌《あいきょう》に、外の人に言葉をかけてもよかろうにと思われるくらいであります。附添の人もまた何か話し出して、駕籠の中の人の無愛想を助けてやればよいにと思われるくらいでありました。
 五里の山路がこうして尽きて、駕籠は八幡村へ入りました。江曾原《えそはら》へ着くと、著《いちじる》しく眼につく門構えと、土の塀と、境内《けいだい》の森と竹藪《たけやぶ》と、往来からは引込んでいるけれども、そこへ入る一筋路。
 二挺の駕籠はその屋敷へ入って行きました。その屋敷こそ、兵馬には忘るることのできない嫂《あによめ》のお浜が生れた故郷の家なのです。
 兵馬はそれを側目《わきめ》に見ただけで、その夜のうちに恵林寺まで急がねばなりません。

 恵林寺へ行く宇津木兵馬と前後して、八幡村の小泉家へ入った駕籠の後ろのは机竜之助でありました。その前のはお銀様でありました。それを兵馬がそれとは知らずに送って来たことも、計らぬ因縁《いんねん》でありました。机竜之助とお銀様とが、こうして相結ばれたことも、計らぬ因縁でありまし
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