は続いて飛び下りる、取巻いていた群集は道を開く。
「こうなりゃこっちのものだ、芋虫ども、ならば手柄に追蒐《おっか》けてみやがれ」
 群集がパッと散って開いてくれた道を、笠に合羽の旅人体と、裸体に脚絆のがんりき[#「がんりき」に傍点]とが疾風《はやて》の如く駈け抜ける足の早いこと。
 二人は街道、人家、畑の中を区別なく北を指して駈けて行く。それを追蒐ける裸虫も弥次馬も、要するに二人の逃げて行く逃げっぷりに比べると、芋虫のようなものです。

         十五

 その夕べ、能登守の邸から、能登守の定紋《じょうもん》をつけた提灯《ちょうちん》と、お供揃いとがあって、一挺の乗物が出ました。主人の殿様が公用でどちらへかおいでになるのだろうと、門番の人はみんなそう思っていました。
 けれども、この乗物はお役宅へも行かず、御城内へも入らず、お代官のお陣屋へでもおいでになるのかと思えばそうでもありません。長禅寺まで来てこの一行が止まったから、さては何か不意の御用があって、このお寺へ御参詣のことと思われました。長禅寺は甲州では恵林寺《えりんじ》に次ぐの関山派《かんざんは》の大寺であります。ここに能
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