八幡様へ流鏑馬の奉納、その日に神様の前で血を流すというのは不吉だろうじゃねえか、野郎どもは裸体で喧嘩をしているのに、それを弓矢であしらうというのは卑怯だろうじゃねえか」というような考えが誰の胸にもいっぱいになったから、それで穏かならぬ色を以て、神尾一派の者と小森の矢先とを眺めました。
「よせやい、よせよせ、弓なんぞよしやがれ」
と遠くから罵るものもありました。
「撲《なぐ》れ撲れ」
という者もありました。
見物は、もとより、屋根の上の騒ぎが何に原因して起り、ドチラが善いのか悪いのかわかってはいないけれども、それを遠矢にかけようという大人げない武士たちのやり方には、満足することができないのであります。そこで人気は険悪になって罵詈悪口《ばりあっこう》が湧いて出ました。しかしまだ石を降らしたり、土を投げたりするところまでは行きませんでしたけれども、小森の覘《ねら》いが容易に定まらないのを痛快がって囃《はや》し立てました。
神尾主膳らは、いっかな屈せず、凄い目をして、ややもすれば暴動をしそうな、左右の群集を睨めていました。ともかくもその威勢で群集は圧《おさ》えられています。
正面の馬見所
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