ど》り出した裸一貫の男がありました。
 裸一貫といっても、腹には新しい晒《さらし》を巻いていました。そうして裸体《はだか》であるにも拘らず、脚絆《きゃはん》と草鞋《わらじ》だけは着けていました。その上に釣合わないことは、背中に青地錦《あおじにしき》の袋に入れた長いものを廻して、その紐を口で啣《くわ》えていました。
 その小屋掛けから跳り出した時には、左の片手に短刀を揮《ふる》って、右の片手はと見れば、それは二の腕の附根のあたりからスッポリと斬り落されて――いま斬り落されたわけではない、斬り落された腕のあとは疾《と》うに癒《い》え着いていましたが、
「どうでもしてみやがれ」
 短刀を振り廻した左の手首にも血がついているし、面の眉間《みけん》を少し避けたあたりにも血が滲《にじ》んでいました。
「野郎、ふざけやがって……」
 小屋掛けから一団の壮漢が、そのあとを追って飛び出しました。
 それらの者を見ると、いずれも博徒であります。
 喧嘩! というのはこれであった。つまり博徒の喧嘩なのであった。賭場荒《とばあら》しを取って押えて簀巻《すまき》にしようとするものらしい。
 この煽《あお》りを食
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