間は、人気の荒いことを以て有名であります。今日の催しとても、単に流鏑馬の神事だけを以てこの景気を打留めにするのは物足りないと思っているところへ、
「喧嘩!」
この声は、無茶な群衆心理をこしらえ上げるのに充分な声でありました。
女乗物の行列の前後左右から鬨《とき》の声が起りました。しかしこの鬨の声はまだ別段に危険性を帯びた鬨の声ではなく、ただ、喧嘩だ! というまだ内容のわからない叫喚に応ずる、意義の不分明な合図に過ぎません。
しかし、この女乗物の行列には多分の附添もいるし、沿道の警戒も行届いているから、それに懸念《けねん》はないけれども、前路に当ってその騒ぎのために一時、行列の進行がとまることはよくないことでありました。それがために混乱を大きくすると困ることになる。それだから駕籠側《かごわき》の侍や足軽たちは、屹《きっ》と用心して眼を八方に配ります。
「喧嘩だ、喧嘩だ」
前の方の騒ぎが大きくなるにつれて、後ろの方の弥次の声も大きくなりました。しかし、そのいずれも、この身分のある女房たちに危害を加えようとして起った叫喚でないことは確かであります。
今、とある小屋掛けの中から跳《お
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