ろうとしたのを、殿様が御主人役で晴れの催しであるこの流鏑馬《やぶさめ》へ、一日もお面《かお》をお出しなさらなくては、殿様へ対しても失礼であろうし、自分たちも肩身が狭いから、ぜひぜひおいであそばせと言って、左右の女たちがせがみました。左右の女たちはそうしなければ、自分たちも出ることができないのであります。
 それでぜひなく、お君の方はこうして桟敷の人となりました。桟敷の人となってみると、勢い評判の人とならずにはおりません。どうも多くの人の見る眼と、囁く口が、自分の方にばかり向いているように思われて、お君は、ここへ来てから度を失うようにオドオドしていました。
 連れて来られた女中たちは、そんなことは知らずに大喜びで、馬場や、見物客や、打揚《うちあが》る花火を見てそわそわとしていました。お君の眼では、馬場も、見物席も、晴れた空も、ボーッと霞のように見えました。暫らくして、
「御免あそばしませ」
 第一番の桟敷から、女中の取締りでもしているような女房が一人、案内を乞う声によって、狼狽したのはお君の方《かた》ばかりではありません、その召連れて来た女中たちまでが不意の案内で驚かされました。
「どな
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