いつを持ってどこへでも行きねえ」
「そうしてお前は?」
「俺は俺で、臨機応変とやらかす」
「そんなことを言わないで、一緒に連れて逃げておくれ」
「そいつはいけねえ、おたげえのために悪い」
「お為ごかしを言っておいて、お前はこのお邸のお部屋様のところへでも入浸《いりびた》るんだろう」
「馬鹿、そんなことを言ってられる場合じゃあるめえ」
「それを思うと、わたしは口惜《くや》しい」
「何を言ってるんだ」
「もしお前がそんなことをしようものなら、わたしはわたしで持前《もちまえ》を出して、折助でもなんでも相手に手あたり次第に食っつき散らかして、お前の男を潰《つぶ》してやるからいい、このお金だってお前、あの後家さんだかお部屋様だかわからない女の手から捲き上げて来たお金なんだろう」
「そんなことがあるものか」
「そうにきまっている、そんならちょうど面白いや、あの女から貢《みつ》いだ金をわたしの手で使ってやるのがかえって気持がいい、みんなおよこし」
「持って行きねえ」
「もう無いのかい」
「それっきりだ」
「その背中に背負《しょ》っているのは、そりゃ何?」
「こりゃ脇差だ、これも欲しけりゃくれてやろう
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