か」
「そんな物は要らない」
「さあ、それだけくれてやったら文句はあるめえ、早く行っちまえ、こうしているのが危ねえ」
「それでも……」
「まだ何か不足があるのかい」
この時、二人の方へ人が近づいて来ます。がんりき[#「がんりき」に傍点]とお角は離れ離れに、塀の側と辻燈籠《つじどうろう》の蔭へ身を忍ばせようとした時、
「何をしやがるんだい」
やにわにがんりき[#「がんりき」に傍点]に組みついて来たものがあります。
それと見たお角は、前後の思慮もなくその場へ飛びかかりました。
「貴様は――」
覆面の侍の後ろから飛びかかったお角は、直ちに突き倒されてしまいました。
「神尾の廻し者だろう、大方、そう来るだろうと思っていた」
がんりき[#「がんりき」に傍点]は片手を後ろへ廻して、侍の髱《たぼ》を掴んで力任せに小手投げを打とうとしました。侍はその手を抑えて、がんりき[#「がんりき」に傍点]が差置いた青地錦の袋入りの刀を取ろうとしました。
「それをやってたまるものか」
片腕のがんりき[#「がんりき」に傍点]は両手の利く侍よりも喧嘩が上手でありました。侍の腰がきまらないところを一押し押して
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