姿であります。
「誰だい」
「わたしだよ」
「お角か」
「あい」
「何しにそんなところへ来てるんだ」
「お前さんが来るのを待っていたのだよ」
「家に待ってりゃあいいじゃないか」
「そうしていられないから出て来たんじゃないか」
 傍へ寄って来たのは、女軽業の親方のお角であります。
「どうしたのだ」
「どうしたのじゃない、お前、またこのお邸へ入り込んだね」
「入っちゃ悪いか」
「悪いとも……だけれど、今はそんなことを言っていられる場合じゃない、手が入ったよお前。手が入ったから、あすこにはいられない、あすこへ帰ることもできない」
「そうか」
「これからどうするつもり」
「どうしようたって、どうかしなくちゃあ仕方がねえ、やっぱり逃げるんだな」
「どこへ逃げるの、わたしだって着のみ着のままで、ここまで抜けて来たのだから」
「だから、俺は俺で勝手に逃げるから、お前はお前で勝手に逃げろ」
「そんなことを言ったって……」
「まあ、こっちへ来ねえ」
 がんりき[#「がんりき」に傍点]は、お角を塀の蔭へ連れて来て、
「幸い、今夜はこっちの目と出て、これこの通りだ。山分けにして半分はお前にくれてやるから、こ
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