りもよく、お君に読むことの出来る眼の色であります。
 お君はムクに導かれて、廊下伝いに歩いて行きました。
 これはこの前の晩の時のように、闇でもなければ靄《もや》でもありませんで、梅が一輪ずつ一輪ずつ綻《ほころ》び出でようという時候でありました。
 お君が、とうとうムク犬に導かれて、廊下伝いに来たところは米友の部屋でありました。そこへなにげなくお君が入って、
「おや、友さん」
と言いました。見れば米友はあちら向きになって、いま旅の仕度をして上《あが》り端《はな》に腰をかけて、しきりに草鞋《わらじ》の紐を結んでいるところであります。
 旅の仕度といっても米友のは、前に着ていた盲縞《めくらじま》の筒袖に、首っ玉へ例の風呂敷を括《くく》りつけたので、ちょうど伊勢から東海道を下った時、江戸から甲州へ入った時と同じことの扮装《いでたち》でありました。
「どこへ行くの、米友さん」
 お君は米友の近いところへ立寄りながら尋ねました。
 米友は返事をしませんでした。
「殿様の御用なの?」
 米友はなお返事をしません。返事をしないで草鞋の紐を結んでいます。
「どうしたの、米友さん」
 お君は後ろから米友
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