りと行きなさい、父はもうお前のすることについては何も言わぬ、お前もこれから父の世話にならぬ覚悟でいなさい」
と言い捨てて、座を蹴立てるようにして立去りました。
 お銀様は父の立去る後ろ影を、凄《すご》い面《かお》をして睨めていましたが、
「ええ、ようございますとも、出て参りますとも、幸内をつれてどこへでも、わたしは行ってしまいます、お父様のお世話にはなりませぬ、死んでも藤原の家の者のお世話にはなりませぬ」
 お銀様は歯噛《はが》みをしました。その有様は、父に対して言い過ぎたという後悔が寸分も見えないで、なお一層の反抗心が募ってゆくように見えます。
「幸内や」
 お銀様は、幸内の寝ている枕許へ膝行《いざ》り寄って来ました。
「いま聞いた通り、わたしはここの家にはいないから、お前、少しのあいだ待っていておくれ、わたしはお前をつれて行くところを探して来るから待っておいで、今夜のうちにもお前をつれて出て行ってしまいたいから、わたしはこれから心当りを聞きに出かけます、お父様にああ言われてみれば、わたしはもう一刻もこの家にはいられない、お前もいられまい、誰がなんと言っても、わたしはお前を連れて出て
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