いうことがお前、お前として」
伊太夫も、さすがにせきこんで吃《ども》るのでありました。けれどもお銀様は冷やかなものであります。
「わたしの面はその時から、誰かのために殺されてしまいました。けれども幸内のために生命《いのち》だけは助けられました、生命も助けられない方が、誰かのためにも、わたしのためにもよかったのでしょうけれど、助けられてみれば、こうして生きているよりほかはないのでございます。幸内に助けられた生命ですもの、幸内にくれてやっても差支えはございますまい、幸内に助けられた身体《からだ》ゆえ、幸内に任せてしまっても誰もなんとも言えないはずではございませんか。世間がわたしと幸内のなかをうるさく言うなら言わしておきましょう、それがために縁談とやらの障《さわ》りになるならならせておきましょう、お父様が今のお母さんをお好きのように、わたしも幸内が好きなんでございます」
伊太夫はついに全くその娘をもてあましてしまいました。ただに全くもてあましたのみならず、そのあまりに執拗《しつよう》な言い分に嚇《かっ》と腹を立ててしまいました。
「お前がそれほど幸内が大事なら、幸内をつれて勝手にどこへな
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