には早いけれども、とても生きた者として受取ることはできないほどであります。
 幸内は口が利《き》けないのみならず、手も利きませんでした。手が利かないのみならず、身体が利きませんでした。それらのすべての機関が働かないにしても、眼だけでも動けば、多少ものを言うのであろうけれど、その眼も昏々《こんこん》として眠ったままでいるのであります。ただ動いているのは、微かなる脈搏のみであります。
 幸内の看病には、ほとんど誰も寄せつけないでお銀様ひとりがそれに当っておりました。駒井家から是々《しかじか》と聞いても、お銀様はそれを耳にも入れないのでした。駒井家の使の者に対してすらお銀様は、一言のお礼の挨拶をもしようとはしませんでした。殿様のことは無論、あれほど親しかったお君の身の上のことすらも尋ねようとはしませんでした。お君からは、お嬢様にくれぐれもよろしくと使の者の口から丁寧な挨拶があったのだけれど、お銀様はそれを冷然として鼻であしらって取合いませんでした。それよりも先に幸内を自分の部屋に近い、前にお君のいたところへ休ませて、その傍に附ききりの姿です。
 お銀様はこんなふうに、ただに駒井家に対して冷淡
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