分のしている残忍そのものの興味をも忘れているようであります。
 かわいそうに幸内は、主膳が酒乱の犠牲となって、弄《なぶ》り殺《ごろ》しにされなければ納まらないでしょう。弄り殺しにした上に、その屍骸を粉々にしなければ納まりそうにはありません。
 主膳は悪魔のうなるように、ウンウンと力をこめて綱を引きました。力余って釣瓶を井戸車の上まで刎《は》ね上げてしまいました。井戸の水は、滝が岩に砕けるように一時にパッと飛び散りました。
「うーん」
 その途端に神尾主膳は、どうしたハズミか二三間後ろへ※[#「手へん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と尻餅を搗《つ》いてしまいました。釣瓶の縄が切れたのです。釣瓶は凄《すさま》じい音をして単独《ひとり》で井戸の底へ落ちて行きました。ハズミを喰って尻餅を搗いた神尾主膳は、暫らく起き上ることができません。
「神尾殿、神尾殿」
 やや暫らくして神尾主膳は、何者にか呼び醒《さ》まされました。
「あ……」
 主膳は気がついた時に、自分の面《かお》の上へ小田原提灯を差しつけている者があることと、また自分の身体を後ろから抱き上げている者があることを知りました。

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